♪低い~雲を広~げた~
冬の~ フフ~ン♪
フフ~ンって、いかにもうろ覚えな歌詞をハミングで誤魔化してみる。
実際冬はまだ先としても、空一面に広がる低い雲の下、波に揺られながらフェリーは進む。
目指すは小豆島。もちろん仕事。
片道約1時間の船旅は右を向くと島と海、左を向いても島と海、前を向いても島と海。
後を向くと知らないおっちゃんと目が合ってしまう。
今でこそ仕事でフェリーに乗る事もあるけども、小さい頃フェリーに乗ると言えば非日常で特別な事やった気がする。
田舎は半農半漁のちっちゃい町なんで海には漁船が並んでるけど、ウチの両親は半農でも半漁でもない勤め人やったんで漁船にのる事も無い。
ツレの家の船で釣りに行ったり、夏休みに乗せてもらったりするくらいやったか。
そんな子供がフェリーに乗るという機会は九州の親戚ン家に行く時くらいしかなく、それもそうそうあるもんやない。
そんな時はそわそわと落ち着き無く、フェリーに乗る前からなぜか自販機でカップラーメンを買ってくれとせがむ程に。
八幡浜港を出発するフェリーは夜出発して早朝大分に着く便で、夜中にどっかへ行くって状況がまたオレのテンションを上げる理由でもある。
フェルトを敷いたようなスペースではみんな病院の診察台にあるような枕に頭を置き、ビジネスホテルにあるような毛布に包まって寝始める訳やけど、
寝るつもりも無いオレはおもむろにお菓子を広げ始める。
売店で売ってる本もなぜか欲しくなるんやけど買ってもらえない事は経験としてインプットされてるんで、
自宅から持ってきたマンガも準備。
あの頃のオレがオトナやったらここで缶ビールも開けるとこやね。
そうこうしてるウチに親父と母親は寝始め、姉ちゃんも眠いのか機嫌が悪くなってくるんで、さっき読んだマンガをもう1回読んだりしてるとあたりに響くゴウンゴウン・・・という連続した重低音がやけに気になり始める。
フェリーのモーター音と言うのか、お尻を伝わり腹に響く振動ってなんか眠くなってくるんよな。
意地でも寝ないつもりでお菓子やマンガ広げたけど気付けばオレのスペースはその範囲しか残ってない。
周りは家族が寝よるし、その他スペースは他の乗客が寝よるからね。
眠さに勝てないのが子供、そして片付けがテキトーなのがオレ。
広げたマンガやお菓子を一ヶ所に寄せスペースを作り眠りにオチる訳です。
それでも早朝誰より早く目が覚める。
(この辺は今でも変わってナイ)
薄暗い中でもデッキに出て海を見てるのが楽しい。
『今海に落ちたら誰にも気付かれんのやろな』という不安なんか気にもならない。
客室に戻ってマンガ読み始めてると母親が起きてきて
『ずっと起きとったん!?』
の問いには
『うん。』
と意味無く強がるのもまた子供よね。
小豆島へ向かうフェリーの中でうどんを食べながら、そんな事を思い出す。
あと、売店での飲食も『あれこれ食べたい言わんの!』とか言われよったな。
あの頃と違い、
ヒトリでフェリーに乗って誰に気兼ねする事無く食べられるってトコがオトナやな。
フェリー乗る前に朝メシ食べとんのにね(^^;